RANAわあるど

日々感じたことを綴る

労働契約法8条 就業規則の変更 合意してなくても従うべきか?

 

大学の労働法の課題で就業規則についての課題がだされ

 

経済学部の私が法律ど素人ながら奮闘したので

 

一応載せておくことにします。

 

 

*設問

○○銀行は、定年を60歳とし、60歳になっても健康で在職を希望する行員については、

68歳まで賃金水準を落とさず再雇用するという雇用管理を行っていた。

しかし、その後、70歳までの雇用・就業確保を努力義務化する法改正がなされたことや

人材確保が今後困難となる可能性を踏まえて、同銀行は定年年齢を70歳まで延長するとともに、

65歳以降の賃金を切り下げ、年間賃金を64歳時の70%に引き下げることを内容とする

就業規則の改正を、同社の多数組合(従業員の90%、60歳以上の行員の約6割を組織)の同意を得て行った。その際、組合に所属していない者を対象として説明会も行った。
1年後に65歳になる田中さんは、この就業規則に従わなければならないか。

それとも、旧就業規則に基づく処遇を求めることができるか(なお、労基法所定の手続は遵守されているものとする)。

 

 

 

まず法律と照らし合わせ検討していく。

労働契約法8条には

労働者と使用者はその合意に基づき労働契約の内容である労働条件を変更できる

 

とし、同法9条には

使用者は労働者の合意なしに、就業規則の変更により労働条件を不利益に変更することはできないと規定している。

 

しかし9条には但し書きが存在し、10条で就業規則の変更において大きな例外が設けられている。

 

10条では
就業規則の変更により、労働条件を変更する場合において、

①変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ就業規則の変更により被る
②労働者の受ける不利益の程度
③労働条件の変更の必要性
④変更後の就業規則の内容の相当性
労働組合等との交渉の状況
⑥その他の就業規則の変更に係る事情

に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする

 

との例外を規定している。

 

まず65歳以降の賃金を切り下げ、年間賃金を64歳時の70%に引き下げることを内容とする就業規則の改正は田中さんの不利益となり、
これに田中さんが合意してない場合原則として労働条件の変更はできない(9条)。

 

しかし、使用者はその改正を同社の多数組合に周知させ、従業員の90%という高い割合かつ変更対象となる60歳以上の労働者6割から同意を得ており(①)、

以前は68歳まで賃金は変わらなかったが、就業規則の変更で65歳以降の賃金が64歳時の賃金の3割を引き下げられることによる不利益は大きいといえど、
定年の引き延ばしは一種の不利益を緩和していると言え、元より定年60歳との定めがあったものの68歳まで再雇用という形で労働者に対する寛大ともいえる措置をとっていた事実があり(②)、

また70歳までの雇用・就業確保を努力義務化する法改正、人材確保が今後困難となる可能性を踏まえたもの(③)である。

{④についてその元となる賃金額について情報はないが}全行員の90%を組織する労働組合との交渉・合意を経て行われたものであり(⑤)、

労基法所定の手続は遵守されている(⑥)ため
変更後の就業規則の内容は合理性のあるものと推測される。よって労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとなると思われる。

 

労働契約法7条の
○あ:労働者への周知+ ○い: その内容の合理性を就業規則の変更が持てば労働契約の内容となることを考えてもこの変更は成立する可能性が高い。

 

 

更に田中さんがこの変更に対し合意していなかったとしてもこの就業規則について拘束され得るかについて、判例を見ていくと、

 

秋北バス事件判決(最大判昭43.12.25 民集22-13-3459)において、

就業規則が合理的な労働条件を定めている限りにおいて労働条件決定はその就業規則によるという「事実たる慣習」が成立しており、このような場合、
就業規則の定めを労働者が知る・知らずに関係なく(知ろうと思えば知り得る状態に置かれている状況にあり)、これに反対する労働者の労働条件も就業規則の定め通りに決定される

との判断を最高裁がしたこと、

電電公社帯広局事件判決(最一小判昭和61.3.13労判470-6)において就業規則の内容が合理的なものである限り労働契約をなしているとの判決などを鑑みると
就業規則の約款説的な理解が定着しており、この事例における就業規則の変更の内容が合理的なものであることより田中さんは拘束される可能性が非常に高い。


(しかし、田中さんが労働契約法10条に基づき使用者と特別にたとえ就業原則が行われていてもその変更を受けないといった個別合意がある場合はこの限りではない。)

 

 

勉強に際して、

強行法規であるけれども、就業規則の変更に関しては

比較的使用者の自由が認められている印象を受けました。

 

う~ん。定年延長で賃金切り下げは仕方ないと思います。

その代り新入社員みたいな若手にきちんと渡してやってください。